2人の紹介

話し手:葦原 海 (あしはら みゅう)
2014年、16歳の時の事故により車椅子ユーザーとなる。2016年秋、NHK番組内で行われたファッションショーをきっかけに、モデル・タレント活動が始まった。現在では、多数のファッションショーに出演の他、TV / ラジオ / グラビア / トークショー / 講演会 / MC など幅広く活躍中。2020年東京オリンピック・パラリンピック公式イメージ動画にも出演。歩けていた頃と、受傷後では視野が変わり、今ある障害者と健常者の壁、不必要な固定概念を、エンタメの力で壊そうと今に至る。

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

健常者と障がい者、そこには見えない壁が存在しているような感覚があります。その隔たりともいえる、小さな違和感をなくそうと、それぞれの立場で活動する2人に話を伺います。第1回は、みゅうさんが今の仕事を選んだきっかけについて。

対談場所は、東京・銀座のレストラン「迷宮の国 アリス」。『不思議の国のアリス』をテーマにした店内は、ティーカップやティーポットが天井に飛び交うティーパーティールーム、チェシャ猫が住むピンクのボーダーカラーのお部屋など、いたるところでアリスの世界観が楽しめます。ディズニー好きな、みゅうさんが選びました。

小学生の頃の夢は大道具さん

浅見 直輝:みゅうちゃんが「車椅子アイドル」になろうと思ったきっかけを、教えてもらってもいいですか?

葦原 海:私が車椅子に乗るようになったのは、高校一年生のときなんですけど。実は小学生のころからの夢は、テレビのスタジオのセットを作る大道具さんでした。

浅見 直輝:え、そうなんですか? それって、裏方のお仕事ですよね。なぜそこに興味があったんですか?

葦原 海:もともと小さいころから絵を描いたり、折り紙などの細かいものを作るのが好きだったので、だからですかね。小学生のときに一番好きな教科は、図工でした。

葦原 海:私、西野カナさんが好きなんですけど。大道具さんになりたいと思った一番のきっかけは、西野カナさんのDVDに収録されていたメイキング映像です。後ろでセットチェンジしているスタッフの人の動きが、メインの映像よりも気になってしまって(笑) 自分もやってみたいと思うようになりました。

葦原 海:でも、車椅子になったことによって、物理的にできなくなってしまって。

きっかけは、障がい者向けのテレビ番組出演

浅見 直輝:でも、今のお仕事は、いわゆる「表舞台に立つ」お仕事ですよね?裏方のお仕事とは、方向性がまったく違っているようにも思うのですが。

葦原 海:1年前くらいに、NHKの障がい者向けのテレビ番組のファッションショーに出演する機会がありまして。
葦原 海:出演されたみなさんは、モデルやりたいとかランウェイ歩きたいとか、そんな風に思っていた人もいたようなのですが、私はもともと裏方のお仕事に興味があったので、その世界を見たくて参加を決めました。

浅見 直輝:えええ! ちょっと、変わってますね・・・

葦原 海:それで、参加してみたら、やっぱりずっと、作り手側の視点で見ていました(笑)お客さんの年齢層とか、どういう人が来ているんだろうとか、そっちのほうが気になってしまって。

葦原 海:そのイベントが終わった後に、FacebookやTwitterでメッセージをいただいたのですが、会場にいらしていた方たちは、障害を持っているご本人や、そのご家族、福祉関係のお仕事をされている方、学生さんなどが9割くらいを占めていて。
とても偏りを感じてしまったんです。

葦原 海:2020年にパラリンピックが開催されるので、それに向けて興味をもってもらうために、NHKさんをはじめとした、いろいろな方たちが、イベントを仕掛けたり情報を発信したりしているのに、あまり上手く伝わっていない気がしてしまって。

葦原 海:そこから、表舞台に立つ、今のお仕事をやっていきたいと思ったんです。

誰にでもできる、という可能性を伝えたい

浅見 直輝:変な質問かもしれないのですが、さっき言われていた、イベントに来場されていた障がいを持つご本人やご家族の方たちの印象って、どんな感じなのですか? ポジティブとかネガティブとか、もしあれば。

葦原 海:イベントにいらしている方たちは、そこまでネガティブではないと思うんですけど。ただ、「自分にはできない(そこに出演することができない)」と、思い込まれている気はしました。 “選ばれし障がい者”しかできない感覚というか。

葦原 海:でも、実は全然、そんなことなくて。誰にでもそれができる可能性があるって、私は思っているんです。

葦原 海:他にも、今なら、テレビや雑誌のメディアに、パラリンピックの選手などが出ているじゃないですか。彼らと比べて、自分はできない、と思ってしまうのは違う気がして

浅見 直輝:なるほど。そこに距離を感じるということですね。

葦原 海:そうです。