障がい者の人に何か手助けをしてあげたいという気持ちはあるのに、どうしたらいいのかわからない――。そんなもどかしさは、「知っている」人が増えることで案外解消するのかもしれません。「見本がなければ自分でやる!」と、ノーブレーキで活動する2人の姿勢は共通しています。連載最終回。

車椅子の人を見かけたら、まず声をかけてほしい

木村 よしお:この前、月イチくらいで海外旅行に行かれてるという重度身体障がい者の方と話したときに、ハッと思ったことがあったんだよね。

浅見 直輝:どんなことですか?

木村 よしお:以前にね、車椅子で坂を登ろうとしている人を、後ろから押してあげようと思ったことがあったんだけど、私にはできなかったんだよね。なんとなく、やったらダメなのかなとか、自分で腕を鍛えてる人もいるらしいし、なんてことを考えてしまって押せなかった。

木村 よしお:そんなときはどうしたら良かったですか?とその人に聞いたら、「まず、声をかけてほしかった」って言われたんですよ。

葦原 海:あぁ、そう言ってくれるといいかもしれません。

浅見 直輝:そうなんですね。
あ、でも確かに、何も言わずに急に押されたら、それはそれでビックリしちゃうか・・・

ドラマに普通に、車椅子のシーンが出てくればいい

浅見 直輝:本当は押してあげたいと思っているのに、どうしたらよいかわからないって、なんかもどかしいですね。「まず声をかける」って知っていれば、簡単にできることなのに。

葦原 海:たとえば、ドラマにそのシーンが出てきたら、イメージつきやすくないですか?

浅見 直輝:それは、確かに、そうですね!

葦原 海:ドラマのオフィスシーンに、車椅子のOLさんが普通に居るとか。日本は障がい者雇用も増えているわけだから、そのほうがリアリティもありますよね? そんなふうに見慣れていく機会を増やすのも、ひとつの方法かなって思います。

浅見 直輝:少し前に、三浦春馬さんが主演でALS(筋萎縮性側索硬化症)の役をやったドラマがありましたよね。

葦原 海:はい。有名な俳優さんがやったほうが視聴率も上がると思うし、演技も上手いと思うのですが。

葦原 海:でもそれだと、本当のリアリティに欠けるというか。だからといって、一般の車椅子の人が出ていたとしたら、うわべのストーリーが悲しいとか感動するとか、それだけになってしまいそうな気がしてしまって。

浅見 直輝:作られた感じになっちゃうということ?

葦原 海:なんとなく、24時間テレビ的な感じがしそうって、すごく思ってしまうんです。

バリアをこじ開けるのは私の役目

浅見 直輝:お2人が今活動されていることで、「ここは変えていきたい」と思っていることを、最後にそれぞれお伺いしたいのですが。
まずは木村先生からお願いしていいですか?

木村 よしお:本来、障がい者という枠はもっと幅広いものなので、そこを柔軟に考えて、分け隔てをなくすことを第一に考えていきたいですね。今は、やっぱりまだ閉じ込められてしまっていて。

木村 よしお:国や行政などにも社会のバリアがたくさんある。
もっと伸び伸びと移動できたり、生きててよかった!と感じてもらえたりするために、やれることは結構あると感じています。そして、そのバリアをこじ開けるのは、私がやらなければいけないと思っています。

浅見 直輝:人間は本来、よろこびを得るために生きているはずですからね。

木村 よしお:そうですね。変な話、人間にある「自由」という権利が、ものすごく束縛されてしまっていますから。

浅見 直輝:みゅうちゃんを見ていると、物理的な束縛はあるかもしれませんが、精神的には何も束縛されていないように思えます。そういう風に、みんながなれたらいいですよね!

ノーブレーキで可能性を広げていく

浅見 直輝:みゅうちゃんは、どうですか?

葦原 海:私は、やはり「伝える」という発信力を大切にしていきたいです。だから、今は、たくさんの人に見て知ってもらう機会をどんどん作っていきたい。

葦原 海:障がいを理由にあきらめるのは嫌ですからね。国の制度のことなどは、もう木村先生にお任せしますので(笑)、私は、一人一人がふさぎ込んでいる状況を、改善していけたらいいなと思っています。

葦原 海:人間だから、何かしら弱点はあると思うんです。でも、その弱点は考え方によっては強みに変わるので、「できない」という思い込みは減らしてほしいですね。

葦原 海:障がい者の人って、モデルとか女優になりたくても、「障がい者だからできない」と最初からあきらめている人も多くいるように思うのですが、それって、そういう人がいないからイメージがつかないだけだと思うんです。

葦原 海:たとえば私は先月、週刊誌のグラビアのお仕事をさせていただきました。グラビアって、賛否いろんなイメージ持たれるかもしれませんが、私は単に、私のように足がなくてもグラビアアイドルが出来る、ということを伝えたいんです。可能性があるんだってことを。

葦原 海:それから、私自身、いろんな可能性を広げていきたいと思っています。今年は講演会のお声がけもいただいているので、チャレンジしたいです。

葦原 海:あとは、海外に行って文化の違いなどを学びたいですね。海外は(障がい者に対して)人がフレンドリーだったり文化がいいって、みんなが言うのですが、動画や写真を見ただけではやっぱりよくわからないから、実際に体験してみたいです。そしたら、絶対に日本の良いところも、改めて発見できそうな気がするんですよね。

浅見 直輝:すごく意欲的でノーブレーキ!っていう感じが、いいですね!

浅見 直輝:「見本がいないなら、自分でやってしまえ!」という姿勢は、お2人に共通している気がします。今日はどうもありがとうございました。

2人の紹介

話し手:葦原 海 (あしはら みゅう)
2014年、16歳の時の事故により車椅子ユーザーとなる。2016年秋、NHK番組内で行われたファッションショーをきっかけに、モデル・タレント活動が始まった。現在では、多数のファッションショーに出演の他、TV / ラジオ / グラビア / トークショー / 講演会 / MC など幅広く活躍中。2020年東京オリンピック・パラリンピック公式イメージ動画にも出演。歩けていた頃と、受傷後では視野が変わり、今ある障害者と健常者の壁、不必要な固定概念を、エンタメの力で壊そうと今に至る。

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)