児童養護施設出身者×木村義雄第6回 施設出身者が語る誰も知らない現実
保護されていいケースもあればそうでないケースもある。選択肢は多い方がいいのか。選択肢は誰が選べればいいのか。対談第6回目。
保護されることのメリット・デメリット
■保護されて身を守ってもらった気がした
ブローハンさとし:僕は、小学5年生から、18歳の自分の誕生日まで施設にいてその後、退所してます。その前は、普通の家庭にいたんですけど、義理の父、新しいお父さんの虐待がひどくて。おしりにライターをやられたんですけど、小学校の学校の先生にそのやけどが見つかったのが原因でやっと施設に移動できました。
ブローハンさとし:義父は、毎日毎日ただ殴るとかじゃなくてさっき言ったライターであぶってきたりとか、寝てるところに頭の上にジャンプしてきたりとかなんか、毎日行われたから、自分の中で当たり前になってきてました。
ブローハンさとし:存在自体否定されてずっと生きてたから、なんかもう自分に起こるものは全て痛みじゃなくなってきてたんですよ。新しいお父さんの虐待から逃げるようにお母さんの友達の所とか学校の友達のところに逃げたりしったりの繰り返しをずっとしてたから、その一時保護所に行ったときも実感がなかったんですね。また戻るかもしれないっていう。
ブローハンさとし:僕は結構養護施設とか、一時施設には結構自分の中ではお世話になったって感覚があります。
ブローハンさとし:ある意味、僕は、完全に外から遮断されたことによって、身を守られたような気がしました。
木村 よしお:どのくらいいたの?一時預かり?
ブローハンさとし:大体2か月、一時的にで、その後施設に移動しました。
ブローハンさとし:児童養護施設なんですけど、そっから退園するまで18歳になるまでずっといさせて頂きました。僕がすごいやっぱ思うのは、SOSをキャッチするところはすぐ救う、対応してくれる場所があった方がいい。
ブローハンさとし:今振り返ると何でSOS出せなかったかというと、もう完全に支配されたんですよ。家に帰るとか恐怖でしかないです。もっと酷くなる最悪のケースになる可能性も出てくる。
■認めてもらうことで変われた自分
ブローハンさとし:その頃の僕はとりあえずこの世にはいちゃいけない存在なんだって思ってました。でも施設に行ってからは、すごい褒めてくれるようになったから、それはもう世界が180度変わったような感じでしたね。
浅見 直輝:今は音楽活動をやってるんですよね?
ブローハンさとし:実は、お母さんの誕生日の日にピアノ聴かせてあげようって思ったのが始めたきっかけで。自分でなんかピロピロって弾いて、聴かそうと思ったんですが、保護所に預けられて、お母さんに聴かす事のできないまま中学2年生の時に母は亡くなってしまったんです。
浅見 直輝:保護所や施設の良い悪いっていう解釈は当事者でみんな違う。その違いはどこから来るんでしょうね。
ブローハンさとし:関わってきた大人の方だと思います。僕は居場所がある事ってすごくいいなって思いました。自分を認めてくれる場所がある事。
ブローハンさとし:僕は施設はすごい良くて、自分と同じような子たちが周りにいる。それで逆にその子たちも1つそこでしか気づけなかった関係性が沢山あって、今退所してからも繋がってる子たちは沢山いるんですよ。
■施設の良い悪いは選べない。その場合の選択肢とは
木村 よしお:1つだけとかじゃなくて、もう少し対応に幅があった方がいいよね。グループホームでもいいわけだし。例えば、里親優先で、グループホームとか施設は最後の手段でもいいかもしれない。
浅見 直輝:もし里親がうまくいかなかったら施設に戻ってもいいし、なんかそういう逃げ場があったらいいんじゃないかなってことですね。
木村 よしお:ある程度年代の似通った人がいたら、共同生活なんて難しいのかな?シェアハウスのように。例えば、退所した子と、今その当事者と。全く分けることなくていいしある意味で、相互に支えあってもいいし。
菊池 真梨香:今はまだやっぱり施設主義だから施設の経験をした子たちの方が圧倒的に多い。でもこれから保護されていく子たちにとっての最善がどうなのかっていうのをもっとみんなと考えたいですね。
木村 よしお:全くそうだよ。選択肢だよね。だから、施設は最後としても、今言ったグループホームやシェアハウスや、沢山あってどれもある意味で選べるようにしたいね。
菊池 真梨香:彼らが自分たちで決めるっていう選択肢があるっていうことだが大事なんだと思います。もしなんか不調であっても自分が決めたかどうかはあるんですよね。決められたからっていうと、自分が決めたというのとでは全然違うなって。
菊池 真梨香:もし自分で決めたんなら、じゃあ次も自分で決めることが出来る。それが保証されているかどうか。
菊池 真梨香:もっとも、これから保護されていくような子たちに「どっちがいい?」って聴いても分からないですよね、施設も里親とか経験したことないから。だからこそ、当事者もユースも自分の経験を話せる機会があったらいいんじゃないのかなって思いますね。一時保護所の子たちとか、未来が見えないけど、過去の経験をシェアできれば分かったらすごくいいですね。
次の対談テーマ:
■「当事者目線」と「施設目線」とは?
これなら、施設にいるより、家に戻った方がいいんじゃないか、、、
でも、一度施設を出てしまうと、二度目の保護は受け入れてもらえなくて、、、
話し手:志水柚木(しみずゆづき)
何度も家から出ようとして、17歳でやっと保護してもらえた経験を持つ児童養護施設出身者。プロジェクト「Our Voice Our Japan」第1期ユースリーダー。
話し手:ブローハンさとし(ぶろーはんさとし)
アーティスト。シンガー。義父にライターでお尻を焼かれ、その傷が学校の先生に気づかれて児童養護施設入ることができた。「Our Voice Our Japan」第2期ユースリーダー。
話し手:Rさん
会社員。中学時代から18歳まで施設で生活。一時保護所で大変苦しい思いをした。
話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。
ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)