習うより慣れろ

デフ(ろう者)の方が必要なのは手話通訳ですが、必要な時に必要な状態になっていることは圧倒的に少ないといいます。課題は制度の壁なのか。対談3回目。

■車いすを押せば「介護」だけど、車で送ると「介護」じゃない

浅見 直輝:具体的に理不尽なことはありますか?

木村 よしお:重度の障害持った方に24時間介護のヘルパーさんが付くでしょ。ヘルパーさんと買い物に行こうとしたとします。車椅子を押して歩いて行ったら手当が付く(費用が支給される)んですが、車に乗って買い物に行ったとしたら、手当が付かないんですよ。

浅見 直輝:スーパー行くにしても徒歩で車いす押せば「介護」だけど、車で送ると介護じゃないってことですか。

木村 よしお:そう。東京なんかでは交通機関が発達してるから車なくても全然困らないんですが、地域では1時間待ってもバスは来ないしそもそも電車や地下鉄なんてあるわけないんだから、そういう所でこのルールだと移動手段としての手足をもぎ取られちゃうような話なんです。

木村 よしお:こういう今ね変なルールになってるんすよ。これから直していこうってんで、今頑張ってる。こういう重度障害っていう分野だとこの問題は大きい。

■手話通訳の手配

浅見 直輝:仲井さんはどうですか?

仲井 健人:講演会を聞きに行っても、通常手話通訳があってその場で理解できるとかもないし、議事録が後で見られるかというと保証されているわけではない。セミナーとか講習会に行くと内容がさっぱり分からない。

仲井 健人:なので、事前に主催者などに「僕は聞こえないので手話通訳とかをお願いしたい」というと「こちらには準備することが出来ません」とあっさり断られたするんですね。なので、自分で手話通訳を探したり、あるいはその手配をするっといったことがあります

木村 よしお:自分で手配する時はお金払わないといけないの?

仲井 健人:はい。市区町村によっては制度があって福祉手当を使うことで自己負担がない場合もあったりするんですね。ただ、企画する側は全ての人達が参加出来るような環境とかを作る義務といいますかそういったものを努力する必要があると思うんですけれども、

仲井 健人:当事者側が申請すると補助が出て実質無料になるのに、主催者側が依頼すると補助の対象にならず費用負担が発生するのです。これではいつまでたっても主催者側が自主的に準備するなんてことはありえない。

■当事者が使い勝手の良い制度をつくらねば

木村 よしお:手話通訳の話が出たんでちょっと脇道に最初は逸れますけども、手話通訳ってなかなか制度が面倒で、国の試験とそれぞれの都道府県の試験と2つある。受からないと手話通訳出来ないという制度になってるんです。

木村 よしお:国家試験通ってるのになんでその県ごとに試験を通ってないと、その県では手話通訳できないという制度が今まであったんですよ。

木村 よしお:私、早速、厚生省の障害保険福祉部の方に話をしてですね、「こんな不合理な事があるか。国の試験通ったんだから、その人がそれぞれの日本中どこでも北海道から沖縄でもちゃんと手話通訳出来るようにすべきだ」と伝えて、いろいろ紆余曲折あったんですが、その制度は改善されました

浅見 直輝:その県の試験とかに合格してないとその地域では手話通訳として活動出来なかったってことですか。それはおかしいですね。

木村 よしお:そう。それと今言ってくれた「当事者がそちらが申請したら通るんだけど主催者側が申請したら通らない」っていうのは、現場の市町村には大体予算持ってるので、主催者側に申請すれば予算が全額でないにしてもなにかしかの補助金が出るとか、そういう仕組みはこれから作っていけると思いました。

木村 よしお:これは私の宿題として承っておきますんで。ケースバイケースがあるんで「こういう場合は出る、出ない」を一旦整理して、一層使い勝手の良いような制度にするべくこれから取り組んできますんで

話し手:仲井健人
デフ(ろう者)サッカーの日本代表。元筑波大学サッカー部。健常者と障害者がともにプレーするサッカークラブ「レプロ東京」所属。

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

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デフリンピック

世界の手話通訳事情は?
サッカーのプレー中の意思疎通の仕方とは。