障がい者の方が感じている不自由とは、どんなものがあるのでしょうか。行動を制限されていることに生じている物理的な壁と、そこに対応するための、心のあり方がみえてきました。対談第2回目。

不自由に感じること

木村よしお:普段生活していて、不自由を感じるのはどんなところですか?たとえば、移動とか。

葦原 海:移動は、確かに不自由ではありますが、私はもう割り切っていますね。

木村よしお:割り切っている?

葦原 海:はい。もう、行きたいから、行くしかない!みたいな感じです(笑)
木村よしお:あー、いいですね!

葦原 海:でも、実際にはやっぱりそれなりに大変なので、だったらもう出かけなくていいや、と思う人はたくさんいると思います。

浅見 直輝:そういう人のほうが、圧倒的に多いのではないですか?

葦原 海:そうですね。たとえば旅行は、行きたくても行かないという人が多いと思います。もし行くとしても、飛行機は使わずに新幹線で行ける場所しか選ばないとか。私はもともと、いろんな所に遊びに出かけるのが好きだったので、行っちゃいますけど。それは昔から変わってないから、性格なのかな。

浅見 直輝:でも、そういう人ばっかりじゃないですよね、きっと。

多くの人が、まず物理的な壁に閉じ込められている

木村よしお:障害者の方の移動をね、もっともっと様々な形でお手伝いできたらいいなと思っています。いつもヘルパーさんを連れて移動するのは、そもそも大変な話なんですよ。今日も、障害者の方が300人集まる会議があったのですが、そこで話題にあがっていたのが、重度の障がい者の人にはヘルパーさんが付くんだけど、ヘルパーさんが障がい者を車に乗せて移動するとね、そのときの給料は出ないんだよね。

浅見 直輝:もうちょっと教えてもらえますか?

木村よしお:ヘルパーさんは、基本的に障がい者の介護には24時間お金が出るんだけれど、車を運転してその障がい者の人を運ぼうとすると、それは「介護」じゃなくて「運転」になるので、お金が出ないことになっているんだよね。もうね、会議の中でも、喧嘩になりそうなやりとりがされていた。
でも、車椅子で動ける範囲ぐらいしか行動できないって、すごく視野が狭くなっちゃうじゃないですか。

木村よしお:会議ではほかにも、以前は施設に居たという重度心身障害者の方が意見されていて、在宅と決まったとき、施設から出て家で生活できると喜んだそうなんです。でも、家に帰ってみたら中身は全然変わってないと。要するに「自由になるかと思ったら、施設に住んでいるときと、なんら変わらないじゃないか」というんですよ。そういう意見を聞いて、この人はもっともなことおっしゃってるなと思いました。

浅見 直輝:みゅうさんは、病院の中と在宅との違い、感じられたことありますか?

葦原 海:私は、入院期間が人生の中で、一番つらかったですね。

浅見 直輝:どのぐらいあったんですか?

葦原 海:8ヶ月間ぐらいです。事故で足を無くしたこととか、リハビリが大変だったとかいうよりも、入院生活の方が、はるかにつらかったです。たぶん“閉じ込められた”という感覚が、私には耐えられなかった。

浅見 直輝:まわりの人で、そういう方いますか? つらそうだな、と感じるというか。

葦原 海:私のまわりにはあまりいませんが、そういうコメントはきます。SNSなどでも、ヘルパーさんのグチばかり書いている人とかをみかけますね。それでも別にいいのですが、もし他に楽しいことがあれば、少しくらい嫌なことがあっても、そればっかりの内容じゃなくなる気がします。たまに、本当に嫌なことがあったときに書くくらいで。

浅見 直輝:行動範囲が限られているから、世界がその中だけになっちゃうってことですね。

あきらめる必要はない

木村よしお:別の重度心身障害者を持った方の話なのですが、その方はね、海外旅行も行くんですよ。

浅見 直輝:この前もどこかに行ってましたよね、アイルランドでしたっけ?

葦原 海:アイルランド!? ヨーロッパですか!

浅見 直輝:めちゃめちゃアクティブですよね。その方は、月1ぐらいで海外に行かれてるんです。それって、「やりたいことをやってる」という感じなのでしょうか?それとも、「あきらめない」という感じなのでしょうか? 変な質問ですけど。

木村よしお:あきめないじゃないかな。

葦原 海:私は、どっちもだと思います。行きたいから行くし、でもそれに対して、不自由とかいろいろあっても、あきらめる必要はないと思っていると思います。

2人の紹介

話し手:葦原 海 (あしはら みゅう)
2014年、16歳の時の事故により車椅子ユーザーとなる。2016年秋、NHK番組内で行われたファッションショーをきっかけに、モデル・タレント活動が始まった。現在では、多数のファッションショーに出演の他、TV / ラジオ / グラビア / トークショー / 講演会 / MC など幅広く活躍中。2020年東京オリンピック・パラリンピック公式イメージ動画にも出演。歩けていた頃と、受傷後では視野が変わり、今ある障害者と健常者の壁、不必要な固定概念を、エンタメの力で壊そうと今に至る。
話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。
ナビゲーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)