「障がい者が働くなら福祉業界」という固定観念に対して、「一般就労の雇用創出とそれを支える仕組みづくり」を行うことで一石を投じながら、現場での見聞を日々発信して保守的な価値観への問題提起をつづけていらっしゃる高野さん。
対談場所は、鎌倉の、ゲストハウス彩(イロドリ)を選びました。

精神障害を持つ方の、雇用の難しさ

浅見 直輝:障害を持ってる方って他にどんな種類の方がいらっしゃるんですか?このゲストハウスで働く人たちは、かなり多様ですよね。

高野 朋也:境界性パーソナリティー障害の人。あと吃音。発達障害。あとは、近所のおばちゃんとかも働いてますけどね(笑)

木村 よしお:境界性パーソナリティー障害っていうのはどういう感じの人なんですか?

高野 朋也:精神科に通ってるんですけど、躁うつような波がある時もありますし、自己評価と他者評価についてグレーな部分が無くて、白黒はっきりした『「良い悪い」で決めちゃうことがあります。あいまいにできない。なので、一人で悩みすぎて心に負担がかかってしまって落ち込んでしまったり、それのコントロールとかがなかなか難しい人たちです。それが溜まるとうつ状態になってしまう。病名は付いてるけれども意外とその治療方法が無かったりします。

高野 朋也:今その精神病の方の働く場所ってほんとに課題だなと思っていて。

木村 よしお:全くその通り。個人によっていろんな程度が全然違う。

高野 朋也:身体障害者の働く場所については、割と大きな会社ならバリアフリーや設備投資の簡単な所はすぐ着手できて、そういう方をけっこう雇えるんですけど。精神病の方は、やっぱりなかなか、っていう実態がありますよね。

浅見 直輝:先生もそこは課題意識あるんですか?

木村 よしお:障害者雇用促進法上、企業が障害者を雇わなくちゃいけない法定雇用率って2.0%だったのを、それを今度2.2%に上げたんです。その0.2%上げた分は、精神障害者の分を入れて雇うようにしてっていう意図があって。0.2%上げて2.2%にしたんです。

木村 よしお:できれば精神障害者を雇ってくださいねということで2.2%に上げたんですが、それをマストにしちゃうと、なかなか現実そこは大変なんだよ。

高野 朋也:雇いやすいとか能力があるとか、売れっ子が出て来ちゃって、売れない人が出てきちゃうんですよ。格差が生まれる。

■多様なハンデを持つ人と働くことの悩み

浅見 直輝:このゲストハウスで多様性のある人達と働いていて苦労はないんですか?

高野 朋也:すごい悩みますね。自己開示をあんまりしてくれないこともあります。仕事の様子や生活の様子を、一緒に共有して生活改善と職場での改善をしていきたいなとは思ってるんですが。

木村 よしお:予測できないことも多いでしょうか。

高野 朋也:それよりも、いろんな意味での偏見ですね。日本ではまだまだ偏見があって、障害者手帳を持ってるってだけで「大丈夫かな」とつい過剰に思ってしまう。ある女性が10年間ぐらい引きこもりなんですね。彼女もその親御さんの偏見から、障害者手帳を取得しないっていう選択をしたので、治療を受けられなかったんですね。彼女としては親が理解してくれて手帳を貰ってた方が自分としてはアクションできたこともあるはずなのに、それができなかった。親の見栄みたいなもので私は外に出られなかったって言うんです。

高野 朋也:多様でいいんだって、心から思ってくれればいいんですけどね。

高野 朋也:多様性があっていいんだっていう、違う者同士が同じ場所に居ていいんだっていう、そういう場をつくっていきたいです。場さえ作っていれば「実は私、発達障害なんです」とか「私、うつ病なんです」とかっていう人達が集まっているので、お互いに安心して声をかけてくれるようになってくるし、認め合えると思います。

■認め合い、自信を持てるようになること

高野 朋也:僕はやっぱり大事なのって「もしかしたら自分でもできるかもしれないって思えること」がモチベーションになると思ってるんです。

木村 よしお:もしかしたら私にもできるかもしれないと。そうだね、それは大事。もしかしたら自分はやれるかもしれないっていうね。

高野 朋也:例えば車椅子だからとサービス業を諦めてる人が、もしかしたら自分でもできるかもしれないと思ってもらったりとか。吃音でも受付をやってる人がうちにはいるんだから、もしかしたら自分でもできるようになるかもしれないとか。

木村 よしお:それはいいことだよね。もしかしたらって思えるかどうか、大事ですね。

高野 朋也:障害者の人が働く場所はいわゆる「作業所」で、パンとかクッキー作ってたり小物を作ってます、ではない。そういうイメージを壊したいです。だから「ゲストハウスでまさか働いてるの?」みたいなちょっと意表を突くようなとんがったようなことを、僕たちは使命としてやっています。

浅見 直輝:すごいいい話ですね。

木村 よしお:誰もが何でもできるんだと思える世界観ですね。

浅見 直輝:まず目的が外国人の人達って観光で、ゲストハウスでっていうのも面白いですよね。皆んなで同じ方向に向かって行ける矢印が一つあるというか。みんなでっていうのが、素敵です。

次の対談テーマ:

働いている側の悩み

話し手:高野朋也(たかのともや)
「すべての人たちが共創する世界は、バラエティでカラフルだ。」をモットーに、障がい者手帳を持つ方とゲストハウス彩(イロドリ)鎌倉の運営を行う経営者。
観光、新しい働き方で共創していきたい。日常的に365日、鎧を着ている。

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)