インクルーシブフットボールとは

聴覚障害を持つ選手を初めて受け入れた筑波大学サッカー部での経験。他の選手と分け隔てなく、聞こえないなら聞こえないなりの対応をしてくれたといいます。対談5回目。

■スポーツは障害を取り払う大きな一つの力になる

浅見 直輝:インクルーシブフットボールについて教えてください。目が見えない、耳が聞こえない、足がない、歩けない、脳性麻痺、そういった障害があっても、サッカーは全ての障害を乗り越えることができるという活動ですよね。

仲井 健人:そうですね。僕自身、いじめがあったとお話ししましたけどもそれは学校のお話であって、サッカーの方ではいじめを感じることはほとんどなかったんですね。何でかなと思うと、団体競技のスポーツは協力しないとできない。障害とかそういうもの関係なく、一人の選手として対応しなければならない状況にあります。そうすると、その選手を見る時の障害というものの影響や印象が小さくなる。

仲井 健人:大学のサッカー部に初めて入った時、障害のある人が選手として入ったのは初めてだったらしいんですけど、みんな不安になったそうです、やっぱり。意思疎通できるのか、とか。

仲井 健人:でも選手たちはみんな、聞こえない一人の選手だっていうふうに認識して、他の選手と分け隔てなく、聞こえないなら聞こえないなりの対応して下さったんですね。例えばジェスチャーだったり、正面にいて口をはっきり開けたり。

木村 よしお:素晴らしいですね。

仲井 健人:それを通して感じたのは、スポーツっていうのは障害っていうものを乗り越えるのかなと。そもそも障害っていう概念をとっぱらう不思議な力があるんじゃないかな、と。なので、これからは障害に関わりがある取り組みがありますけども、その中の一つとしてスポーツは障害を取り払う大きな一つの力になるのかなと思っています。

■スポーツは障害を取り払う大きな一つの力になる

木村 よしお:障害のある方々のスポーツを見ていて、健常者よりコミュニケーションや体の動かし方のエネルギーがすごいじゃないかと何度か思いました。こりゃあ健常者は全然叶わないとすら思いました。障害者のバスケにしてもサッカーにしても、とても真似ができないようなレベルまで高いわけでしょ。通の健常者から見たら、障害者のスポーツを見たら「これ一体どうなっているんだ」ぐらい、みんな驚いていますから。だから、事実上壁がなくなってるんですよね。

浅見 直輝:実践的な一つの手段ですね。

浅見 直輝:先ほどの話にあった、サッカー部入って壁を感じずに一緒にプレーできたのはなぜだと思いますか?

仲井 健人:筑波大学サッカー部でも最初は不安があったんですけども、入ってすぐの時に、聞こえないから正面にいて口をはっきり開けてほしい、あと身振り手振りを加えてほしいってことを伝えたんですね。

仲井 健人:すると、会って間もないのに口をはっきり開けてくれたり、コーチの指示が聞こえない時も仲間が今からこれをやるよというふうに教えてくださったんです。口をはっきり開けて。

木村 よしお:柔軟に対応してくれてたんですね。

仲井 健人:そうです。全体ミーティングの時も、同期が隣で文字で書いてくれたりとか、パソコンで書いてくれたりフォローしてくれて。

浅見 直輝:どんなことが大切だと思いますか?

仲井 健人:自分がどういったニーズを持っているのかを理解した上で言葉にして、相手に伝える。これが最も大事だと。逆に相手側、この場合だと健常者になりますけども、相手のニーズに柔軟に対応するっていう行動が必要になるのかなと思います。

木村 よしお:人間同士の基本かもしれないね。1対1の関係での大事なことだね。

木村 よしお:普通のコミュニケーションをしていれば、私が健常者であなたが違うとか、そういう観点を全く感じないですね。今日は仲井さんと話していて、違和感全くなし。

仲井 健人:誰でも聞きやすい音もあれば聞きづらい音もあるし、だから健常者だからとか障害者だからとかじゃなくて「もうちょっとこうしてくれたら嬉しいんやけど」みたいな、当たり前の普通のコミュニケーションができたらいいですね。

話し手:仲井健人
デフ(ろう者)サッカーの日本代表。元筑波大学サッカー部。健常者と障害者がともにプレーするサッカークラブ「レプロ東京」所属。

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)