児童養護施設出身者×木村義雄第2回 施設出身者が語る誰も知らない現実
当時13歳だった彼女が体験した、児童養護施設に入る前の、一時保護についての壮絶な現実についてお聞きしました。対談第2回目。
現実の一時保護では何が起きているのか
■保護されるまでの不安との葛藤
Rさん:私は、高校1年生の時に、一時保護所に1週間保護されました。前から、中学2年生くらいから児童相談所で何回も面談があって、「自分の意志で保護されたいって言えば保護できますよ」っていうふうには言われてたんですけれども、学校生活も変えたくないし、そもそも児童相談所でのカウンセリングでは信頼関係をあんまり築けなくて。
Rさん:児童相談所の職員の対応が信用できなかったんでしょうね。いっぱい色々調べて、施設出身者の大学進学率は約3割で、一般家庭の大学進学率は7割ってのを見たか聞いただけすごい心配になりました。
木村 よしお:保護されたらもっと不自由になるんじゃないかっていう心配ですね。
Rさん:そうです。決定的な暴力では、お父さんに耳を切られてしまって、それで保護になりました。保護というか友達のおうちに逃げて、その後警察に行きました。そこからもう自分の意志とかじゃなく保護されました。
Rさん:その時に体の痣とかを見られました。「殺意がないとできない大きさの痣」だとかがいっぱいできてて、これはもう保護だっていうことになって。
■一時保護所はすし詰め状態だった
Rさん:最初に八王子の一時保護所に保護されたんですけれども、多分、どこの保護所も満員だったのか。すし詰めのちっちゃな個室に入れられました。性的暴力とか受けた子もきっといると思うんですけど、雑魚寝で誰もわからないし、ある日突然入所者が増えたりしました。
Rさん:児童保護の間はしゃべっちゃいけない決まりがあるんですね。会話もしなくてただただその狭い部屋にずっと押し込められてじっとしてるだけっていう場所でした。一時保護所なんですね。満員なのは知ってたんですが、お風呂にもなかなか入れてもらえなくて
浅見 直輝:その後どうなったんですか?
Rさん:新宿の保護施設に移動することになって、引継ぎ間の問題で、1週間お風呂入れてもらえなかったんですよ。で、そのまま新宿でもお風呂入れなくて。新宿もやっぱりすし詰めですごい汚い部屋で、喋っちゃいけない決まりなんですけど「死にたい」とかそういう独り言だけ聞こえてきました。
木村 よしお:ほんとにすごい状況だね。
Rさん:すごい状況だったんですよ。施設の職員さんでも、夜に不安で泣いてたら「寝る時間なのに何泣いてるんだ」って連れ出されて説教されたりして。とても安心できる場所ではなかったんですね。
■あまりにひどかったため、虐待されていた家に戻った方がマシだとすら思った
Rさん:施設が決まらず進展のない子もいて、もう2か月いるとか言ってる子もいました。
Rさん:お風呂も入れないところで2か月なんて耐えられないから、辛いことが待ってても自分の意志で家に実家に帰ったほうがまだ良くて、自分で自分の生活を責任を持ったほうがもっと幸せなんじゃないかっていうふうにすら思ってしまいました。そして、自分の意志で出たいですって言ってしまったんですね。
浅見 直輝:出たいというのは、良くないことなんですか。
Rさん:東京都としては、一時保護所を退所した人まで対象にすると、対象者が広がってしまうから対象者が広がってしまうし予算がないから、「あなたは対象外です」って断られてしまったりして、後々奨学金も使えないだとかあるようでした。
木村 よしお:セイフティーネットの網から落ちてしまうんだ。
浅見 直輝:すし詰め状態っていうのは場所にもよると思いますけど、何人くらい?
Rさん:4畳半くらいの部屋に6人とかでした。
次の記事テーマ:
「当事者目線」と「施設目線」とは?
これなら、施設にいるより、家に戻った方がいいんじゃないか、、、
でも、一度施設を出てしまうと、二度目の保護は受け入れてもらえなくて、、、
話し手:志水柚木(しみずゆづき)
何度も家から出ようとして、17歳でやっと保護してもらえた経験を持つ児童養護施設出身者。プロジェクト「Our Voice Our Japan」第1期ユースリーダー。
話し手:ブローハンさとし(ぶろーはんさとし)
アーティスト。シンガー。義父にライターでお尻を焼かれ、その傷が学校の先生に気づかれて児童養護施設入ることができた。「Our Voice Our Japan」第2期ユースリーダー。
話し手:Rさん
会社員。中学時代から18歳まで施設で生活。一時保護所で大変苦しい思いをした。
話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。
ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)