齊藤直×木村よしお第2回 障害者支援の壁は、使う側の目線に立っていないこと

齊藤直×木村よしお第2回 障害者支援の壁は、使う側の目線に立っていないこと

パラリンピックを前に、グレーゾーンと言われる子たちのスポーツする環境は減っていると語る、障害者支援の現場で日々格闘する30代のNPO法人代表。現場の問題を解決していくため、現場の声を届けるこの対話、本シリーズの第2回対談。

話し手:齊藤直(さいとうなお)
特定非営利活動法人アダプティブワールド理事長

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

障害者支援の実態

パラリンピックを前に、グレーゾーンと言われる子たちのスポーツする環境は減っている

浅見直輝:それを元にどういった活動をしているかというところと、後は現場で実際に起きていること、声でした。2020年の東京オリンピックに向けて、障害者スポーツというのが叫ばれていると思うんですけれども、齊藤さんによると実は実態は違っていたりとか。どこまで言っていいか分からないですけど、スポーツ庁にたらい回しにされたりとか、いろんな現場での課題があるそうなので、まず齊藤さんの方に、他にやっている活動、アダプティブワールドの全容であったりとか、現場の声、困りごと、ちょっとお話ししていただいた後に、木村先生の方から、たらい回しにされている背景にはこういう実際の、これからの、みたいな話をしていただけたらなと、そう思います。

齊藤直:まず僕たちの活動には2つありまして、自分たちで企画している活動と、依頼を受けてやる活動があるんですけれども、自分たちでやる活動には、すごくたくさんの方にご依頼頂いているのが、障害のある子たちの個別指導教室と言いまして、体育のスポーツの家庭教師の授業、みたいなものなんですけれど。これは障害のある子たちが、なかなか学校の体育についていけないですとか、もしくは普通のスイミングスクールに行ったら断られてしまった、だけれども、こういうことを習わせたいということに対して、1対1で指導していくっていうものなんですけども。この現場で今困っているのが、会場なんですね。今2020のために日本がいろんな施設を作って、障害者アスリートもこういう所を使いますと言っているんですけど、実はそのパラリンピックに向けて動いている2020の路線と、僕たちが活動している現場というのは、ものすごく乖離している現状があるように思いまして。僕らの現場で何があるかと言いますと、まず障害のある人たちが施設を使う時に、障害者手帳が求められるんですね。「ほにゃらら障害」という障害名が付いていたら、その手帳が発行されるんですけども、発達障害というのがありまして、そういう障害のある子たちはその手帳は発行されないんですね。発行されないと施設が使えない、という現状が1つ。じゃあその障害者専用の施設が使えない場合には、一般の施設に、となるんですけども、一般の施設に行くと、私たちがセットで入って私たちが指導することは、条例で禁止ですって言われるんですね。どこまで指導してはいけないかというのは、非常にグレーなんですけれども、一緒にプールの中で付いて歩いているのは良いと。これに何の意味もないです。私たちの指導というのは、公共の施設を使う上での指導と、もちろん身体的な指導とあるんですけど。身体的な指導をしてあげる対象は、言葉で認知するのは難しかったりするために、身体を触ったりですとか、実際にこの指導に入っていくわけなんですけども。それをしちゃいけないって言われると、そういう発達障害、グレーゾーンと言われる子たちのスポーツする環境というのが、どんどんなくなっていくんですね。

木村義雄:何で駄目だと?

齊藤直:現場の監視員さんは条例としか言わないので、何とも言えないんですけど。

木村義雄:何でそんな条例ができたんだろう。

齊藤直:何ででしょうね。まあその人たち曰く、それをオッケーにすると、言葉で言う健常児に対して教える人たちが、例えばコナミスポーツクラブだったら、コナミスポーツクラブの中で仕事をしている人たちが、そういった所を使い始めると、一般の人たちが使う枠がどんどん狭くなってくるということを言われるわけなんです。でも、じゃあ有料で良いからこのレーン貸してくれと。でも、それもできない。現場の人にできないと言われると、僕たちはどうすることも。

木村義雄:でも、そちらはボランティアでやっているわけでしょ。

齊藤直:僕たちですか?僕たちは有償事業です。それも1つ引っかかるんだと思うんですけど。

木村義雄:それで稼いじゃいけないっていう。

齊藤直:そうですね、公の施設っていう形で。公の施設じゃないという言い方をしてしまえばそうかもしれないんですけど、スキー場ではそれがありえないんですね。スキー場ではいろんな先生たちが、スキースクール以外にいろんな先生たちが金銭をもらって、きちんと指導している。もっと言うと、そういう先生がいるからスキー場が儲かっているという現状があるので、そういう先生たちを誘致しているスキー場もあるわけですね。経営的には良くなるはずなんですよ。なんですけれども、そういう現場ができないというのが、まず1つ。じゃあ、そういう現場がない背景には何があるんだろうと思っていたら、私たちは昨年の2018年度から、今2年目なんですけれども、東京都の八王子東特別支援学校で、先生方に体育の指導法を指導しに行っているんですね。これは、その前の年に支援学校の校長先生たちの会があって、そこで体育部会というのが初めてできたらしいんです。その体育部会の中で、ぶっちゃけ支援学校の体育って体育になっていないという話になって、指導できる人間いないか、ということで私たちのところに話がきたんです。現場に行ってみたら、本当に指導というとこではないんですね。例えば車椅子の子は車椅子に乗ったまま何かして終わるとか、ということがあるんけど。私たちのスポーツ現場では、必ず車椅子の子たちは車椅子から降りて、何かをするんですね。それから水泳の中では、本当に私たちは、浮くとか、あとは自分たちを脱力するとか、あとはスカーリングって、少し動かせる所を動かして進んでみるとか。残存能力を使ってとか、その残存能力を向上させる方向に、私たちの指導はあるんですけれども。実際の支援学校でやられていた水泳の授業っていうのは、何かあっちゃ困る、先生が2人体制でその子を抱えて、プール1周してあがるんです。入浴なんですよ。初めての授業で、「それ入浴ですよ」って言って。「浮き具の使い方はこうです、身体の使い方はこうです」ということを指導していったんです。これやっていったら、「僕たちみたいな活動、どれだけ東京都でしているんですか」って言ったら、初めての取り組みだって言うんです。これはいけないと思って、2020にパラリンピックが来ますけれども、その背景では、さすが先進国日本だと言われるために、その障害のある子たち、パラリンピックに全然満たない子たちの環境作りが、こんなに進んでいるんだというのを届けるために、まずロールモデルとして東京都で、こういうことをやりませんかと思って、協力していったんですね。そうしたら、スポーツ庁に行けと言われて。スポーツ庁に行ってそのことを話して。そうしたら、一NPOからその意見をもらうわけにはいかないと。スポーツ庁としては、都道府県の教育委員会から、こういうオファーがあった時に何かできるから、まず都道府県の教育委員会に行けと。こういう助成枠があるから、この助成枠に対して都道府県の教育委員会経由で手を挙げてくれたら、その事業はあなたたちができるかもしれないと。なるほどと思って、僕は東京都の教育委員会に行ったんです。そうしたら、それこそ電話の時点で門前払いで。何でかと言ったら、その事業をするためには、予算付けが必要だと。いや、あの助成金を取ったら何百万円というお金が東京都に入るんですよと言ったんですけれども、そのお金が入るのは年度末だと。だからその事業をするためには2年前ぐらいから予算付けというのをして、やっていかなくちゃいけない。「僕たちがその提案をすることもできなく、それを実行することはできないんですか」って言ったら、「できません」でガチャ、だったんですよ。なので、今現場では、1つは学校の中に入って先生方に指導したりしているんですけども、それは継続にやる必要がある。もう一方は、その先生たちがその子たちに、体育・スポーツが絶対に必要な子たちに対して、うまく指導ができないがために、親御さんも、この子たちがもっとこんなことができる、あんなことができるという認知がないわけですね。だから学校以外でスポーツをさせるという環境がないわけなんですけれども。あの子たちはスポーツをすることによって、日常生活行動範囲が広がり、それから社会のルールを学び。スポーツをきっかけにできることっていうのは、すごくたくさん。その中で環境が作られないということに対して、何か先生からご指導頂けることがあったら。

木村義雄:まずスポーツ庁は、あなた方の話を直接聞かないっていうのは全くおかしいですね。「教育委員会から上がってきたものでないと取り扱わないっていうのは、それ法律に書いてあるの?おかしいじゃないか」と。自分たちには全く企画能力がないのかと。スポーツ庁としてそういうことやらないの?と。各都道府県の教育委員会の下請けなのかと。スポーツ庁いらないんじゃないか、と。単なる今までの小さい庁ではなくて、一係ぐらいでいいって(笑)。本当におかしな話ですよね。そこからまず直していって、スポーツ庁の、おそらく担当者が今オリンピックとパラリンピックで頭いっぱいだから、それ以外のことはもう全然入らないというようなところがあるんじゃないかと。木を見て森を見ずというようなのが今のスポーツ庁じゃないかと思いますよね。例えば、今度サマータイム導入しろって言ったって、朝早くやればいい話ですよ。それを日本中の時間を変えろって言ったら、大騒ぎですよ。北海道から沖縄まで全部やるわけだから。東京都のオリンピックのためだけにサマータイム導入するって言ったら、これはおそらく、今は何か言っていますけど、やっぱりここは国民全体のコンセンサス、マジョリティ、大多数のコンセンサスは得られるかって言ったら、何か自分たちのオリンピックを成功するためには、他のことはどうでもいいんだというような感覚が、今の話を聞いていると、スポーツ庁にあるんじゃないかと邪推したくなるようなところはありますよね。オリンピックはスポーツ庁じゃなくて、オリンピック担当庁にしたらいいんだよね。スポーツ庁っていうのは、もっと幅広く。オリンピック担当庁じゃないんでしょ?って。それぐらいで言い返してやって。

齊藤直:僕がすごく思いますのは、環境がないんだったら、大変だと思うんですね。例えばその場所がないんだったら作るのと、ランニングにすごいお金がかかる。だけども、日本はすばらしくて、1つの市にいくつもプールがあって。体育館があって、あまり使われていない所もたくさんあるんですね。にもかかわらず、使っちゃいけないというルールがあるだけで使えないというのが、これがどうにかできないかと。

使う人の立場じゃない

木村義雄:これ役人の発想なんですよ。どういうのかって言ったら、例えば交通事故が起こるでしょう。交通事故を減らせっていうと、一番簡単なのは道路に車を走らせなかったら。それと同じような感覚で、事故が起きて新聞・マスコミ沙汰になると責任問題になるっていう、そういうのがないようにできるだけ、せっかく使っても、使わせないようにする。絵に描いた餅にする。これ今の役人の中でそういうとんちんかんな考えを持っている役人が多いです。それが染みついているもんだから、ちょっとでも違うと全部排除しちゃう。幅広く、それぞれの皆さんのために公の施設を有効に使っていこうなんていうのを、そういう精神でやって、いかにも自分を守る、自分の立場を守ると。そういう役人多いじゃないですか。それがそういうところに見事に表れているなと、私はその話を聞いて思いました。ひどい話ですよね。だから、使う人の立場じゃないんだよ。障害者の目線だとか、使う方々の目線じゃなくて、自分たちが管理しているんだと、皆さんに使わせてやっているんだと。そういう感じじゃ、公(おおやけ)の精神を全然理解していない。だから多いんじゃないですか、今、日本で。それも今壁にぶち当たっているんで、そういう考えもちゃんと直していかなきゃいけないというのを、私のいつもの精神です。それをどうやって解消していくかっていったら、やっぱりそこはまさに壁を、使わせないという壁を。その人の置かれている立場、例えば今だったら、あなたが提案した、障害者の立場から、どうやって使わせてくれたら一番良いか、その視点がないんですよ。
齊藤直:その壁を取り払うためには、どこから着手すれば良いんでしょう?

木村義雄:それは、今度政治が一番そういう面では。まず使い方のガイドラインの元には法律があるから、さっき言った条例とかで使わせないようにしていると。じゃあ、そんなような条例を何で作ったかということが、その辺から追っていったら、最初の法律の中に、例えば使う方の立場に立った使い方をさせなさいとか、一部入れるっていう。まず最初に。そういう精神がないと、今言ったように勝手に、せっかく法律は良かれと思って作ったんだけど、都道府県や市町村が条例という形で上乗せ、横だししているんですから、よりいっそう厳しい中にしちゃっているんですよ、自分たちの都合で。それをやったら、例えば多く人手がいると。ところが人手ってそんなに集まらないから、人を使えないから、結局できるだけ、自分たちの都合で安全な方向で制限しちゃうというのが、現状です。事故が起こったら、さらにもっと厳しくして実際上は使えないという、いくらでもある。

齊藤直:いくらでもあるんです。おっしゃる通りで。

木村義雄:もったいない話。まさに絵に描いた餅にしちゃっている、その壁をぶち破っていこうと。最初の方の、法律ではその問題点が出た、精神をそういうふうに。使う人の立場に立った制度にしていかなきゃいけないというのが、まだおそらく原点にないんだと思う、そこから考えて。今スポーツ庁の役人だって、オリンピックのことしか頭にないから、そのことは後回しになってくる。おそらく彼らも、確かに目標があるからそこに向かって邁進するのは良いんだけど。

浅見直輝::何のための庁かって話になりますもんね。

木村義雄:オリンピック担当庁だったら、それで良いよと。しかしスポーツ庁です、と。あまりにもオリンピックに関係ない人がたくさんいるもんだから。

浅見直輝::スポーツしている中でも、トップの人ですもんね、オリンピックだと。現場でもっとやっている人たちのスポーツは、誰が担当するのか。

木村義雄:幅広い使う人の立場に立った政策じゃないというところが、ここを直していかなきゃいけない。

実態とかけ離れている障害者支援の現場の実態。それについて、次回もさらに深掘りして語って頂きます。