齊藤直×木村よしお第3回 2020年パラリンピック後の危機感

齊藤直×木村よしお第3回 2020年パラリンピック後の危機感

東京でのパラリンピックが終わったら、また元に戻るんじゃないかと危惧する、障害者支援の現場で日々格闘する30代のNPO法人代表。現場の問題を解決していくため、現場の声を届けるこの対話、本シリーズの第3回対談。

話し手:齊藤直(さいとうなお)
特定非営利活動法人アダプティブワールド理事長

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

障害者支援の実態

モデルケースはどう作るのか

浅見直輝:そうしたら、それも踏まえて最後の3つ目のトピックに入っていければなと思います。それは一言で言うと未来なんですけれども、この障害×スポーツの未来を、どう作っていくことができるのかっていうのをトピックで話し合えればなと思います。その中でも特に、今まで出てきた話の中だと、やっぱりその現場には現場のニーズがあるし、一方で政治側には、政治側のリアルなニーズ、なるべく自分が担当している時には、課題は起きないでほしい。だから未然に防ぎたいから、少しでもそのリスク要因があるものは抑えたい。だから、施設はあるのに使わせない、そこのお互いのニーズが合致していないというか、多分お互いに言い合うだけだと、お互いのニーズに合わないままだから、並行路線たどっちゃうかもしないけど、じゃあここのニーズを一致させるにはどうすればいいか。そこを齊藤さんの現場での感覚もそうですし、もし先生の中で、どこかの地方自治体で障害支援のみならずですけど、先進的な、リスクを負ってでも取り組んでいる先行事例とかあったら、ちょっとお話しいただければと思います。

齊藤直:僕が今まで経験した中では、例えば福井ですとか岩手ですとかに呼ばれて講演ですとか、その事業の実技もやってみましょう、みたいな所に行ったりするんですけども、そういった所では、そもそも利用率が少なかったりするので、これもあれも使ってくださいって、施設側が解放してくれるっていうこともあるんですね。そこの地域の問題は、今度は逆にインフラなんですよ。お父さん・お母さんが連れて来れないと、絶対的に来れない所にあるから、東京みたいにバスがあるとか福祉タクシーがあるとか、そういった環境ではあまりないと。なので、場所を開放してくれる所には、インフラがない。東京のようにインフラが整っている所には、たくさんの人が使うから場所が貸してくれない。これをどういうふうにしたら解決できるのかと思った時に、僕が考えたのが、例えば普通の施設を使うのは難しいかもしれない。でも、土曜日・日曜日の、例えば特別支援学校のプールなんて空いているわけじゃないですか。ここを貸してくれないかということも提案しに行ったんですけども、それを使った時に誰が光熱費払うの、みたいなことを言われたんですけど、そんなのやらせてくれれば、うちが払うと思うわけなんですけれども、そういう、今あって使われていない時間ですとか、使われていない時に何か私たちが使うということができたらいいなと思いますし、何かすごい僻地に毎週末行くわけにいかないんですけども、東京ではないけど、どこかから抑えたロールモデル作りみたいなことをしていけばいいのか、何かスポーツ以外でも、先生のこれまでのご経験で、何かそういう新しい事業のモデル作りはこの地域からやっていったよ、みたいなことがあったら伺いたい。

木村義雄:モデルっていうのはそういうもんで、今制度としてはないけれども、モデルで事業でやっていって有望であれば広げていこうというのがモデルなんですよ、モデルチームなんです。だから最初の、例えば役所のやり方としては、まず調査費を作ると。それでどういうニーズがあるか調べると。次に、それを翌年にモデル事業として2、3カ所、予算を付けてスタートしてみて、良ければ全体に普遍的にやっていこうという。いくらでも、それは役所の予算の付け方としたら、これはもうオーソドックスな話、だからそういう意味で。それともう1つは空いている施設を有効に活用するのは、これもどんどん認めているんじゃないかな。それは現場サイドで認めさせているはずですよ。例えば、校庭の庭の開放なんかも、やっている所たくさんある。必ずそこで言えるのは、じゃあ誰が監督しているんだとか、誰が責任を取るんだとか、そういうマイナーなことで、しかし新聞沙汰になったら叩かれるしね。そこだけ上手にその話し合いの中で決着つけて、こういう場合の責任はこうだと決めればいい。それは、多少は決めておく方が必要なのかもしれないけども、その辺も含めてもう少し、せっかくあるものを有効活用して、絵に描いた餅にしないということは、本当に大事なことなんで。それはどんどん提案していっていれば、他の人がやらなければ私がやりますから。具体的に話した、こういうようなことでやりたいと言ったら、それこそスポーツ庁に、こうなっているんだとか、こちらから問い合わせをしてもいいし。それから、よく我々区政サイドからすると、よく言われているのは、こういうあなた方の要望があれば、まず仲間で任意で勉強会を開いて、この人数だけ役人呼んで、もう少し議員と役人とで、討論会だったら討論して、議論して、制度としてどうしようかと。そうしたら今度は、推進する議員連盟なんかを作って、法制化するとか、予算化するとか。こういうのは、もう日常茶飯事で、しょっちゅうあることだから。

パラリンピック2020年終わったら、また元に戻るんじゃないか

浅見直輝:これ実際に、齊藤さん現場で活動されている中で、同じような課題を抱えている組織とか人って、他にもいるのかなと思うんですけども。私も不登校を経験して、不登校・引きこもりの家族だったりとか、それを支援していく方々、いろんな人たち、2、3000人くらいお会いしてきて、それぞれ各地に点在していたんですけど、やっぱり学校以外の、学校に合わない子もいるんだから、合う子は学校に行けばいいし、合わない子は学校以外の教育の機会も保証すべきじゃないかっていう声が強くて。それがかなりの量が集まって、議員連盟ができて2016年の12月に、教育機会確保法という、1つ法律ができまして。それはまさしく、各地に点在していたけど、繋がっていなかった声があり、でもそれが1つに繋がって、次に国、制度と繋がった時に、1つの形になったというのを目の当たりにしていたんですけど。齊藤さんがおっしゃっている、この現場での課題って、相当いろんな人が抱えているのかと思っていて。そういうお互いの困りごとを共有し合うような場所とか、そういうのはあまりないんですよね。

齊藤直:確かにないかもしれないですね。まず僕がすごく、ずっと考えていることに、この領域でうちのNPOアダプティブワールドでやっているんですけど、同業他社がいないんですよ。15年間、同業他社が1社も出てきていない。先輩もいなければ後輩もいないんです。これは、まず予算で動いている領域の中で、自分たちで収益事業をやるっていう難しさがある、というのはあると思うんですけども。これはノウハウを学べばどうにかなるんですね。僕が一番問題だと思っているのは、この人たちが活動する、その環境がないんですよね。ここで指導しちゃ駄目だ、あそこで指導しちゃ駄目だと言われると、やっぱりすごく活動しづらいわけなんですよ。なので、やっぱり環境作りというのをしてあげないと、同業他社が出てこない。同業他社が出てこないと、産業として成り立っていかないので、日本各地で当たり前に、障害のある子たちがスポーツをしているという環境は生まれないかなと思っていて。

木村義雄:それ一番必要なところが、全く実現できていないという感じがする。

齊藤直:おっしゃる通りです。このままいくと、僕がずっと言っているのは、2020年終わったらまた元に戻るんですね。もっと言ったら、1回花火は上げたからもういいでしょってなっちゃうかもしれない。それがすごく嫌だなと。

木村義雄:一部突出した、健常者よりもはるかに有能なパラリンピックの選手は注目を浴びるけれど、その他大勢の人たちはそのまま置き去りにされちゃうような、そういうような恐れが出てきちゃいますよね。せっかくのチャンスなのに。本来はオリンピックとパラリンピック、そもそも分ける必要ないような感じもするんだけど。オリンピックの中では重量級とか軽量級とか、体重によってクラス分けるじゃないですか。今度は障害者級とか、オリンピック自体を分けるのも、ちょっとアレで。本来であれば一緒にやった方がいいような感じはします。ただ、あまりにも健常者と障害者を分け過ぎるよりも、本当に一緒になるような、当り前だと、車椅子の人が見たって、この頃年を取った車椅子で動いている人もいくらでもいるし。あまりにも健常者、障害者の垣根を作り過ぎる。その垣根をやっぱり直していかなきゃいけない。しかし、本当は垣根というのは、どういう垣根があるのか、個人の感覚の垣根なのか制度の垣根なのか、いろいろ垣根があるんですけど。垣根とか壁をまず分類分けして、する必要がないような時代が来なきゃいけないなと。

浅見直輝:そうしたら、ネクストアクション。齊藤さんの困りごとを直接、例えばスポーツ庁の方に繋いでいただいて、解決に導いていただけると、そういうのは?

木村義雄:じゃあ、それはやりますよ。あなたの言った話でもって、こういうことが実現できたらとか、さっきの条例の話とかというのはどうやったら、要するに氷を溶かすことができるかどうか、取り組んでみますから。またぜひ、仕様書みたいなのを書いて、提案を。

齊藤直:よろしくお願いします。

木村義雄:それでもって、もっと多数の人たちが必要とするんだったら勉強会開く、あるいは議員連盟を作るとか、そういう方面でしっかりと取り組んでいきたいと思っているので。

齊藤直:よろしくお願いします。

木村義雄:頑張りましょう。大事なことですから。障害を持った人たちの、本当に大きな福音になりますから。さっき言ったように、障害者と健常者の壁なんかないんだから。溝なんかないんだから。そういう話をしていかなきゃいけないなと思います。

木村義雄:行政が、自分たちの責任逃がれのために、せっかく皆さん方の良いアイデアをなかなか実行しようとしない。そこにも問題があるから、我々政治の立ち場から、どうやって直していったらいいか、しっかりと取り組んでいきます。

浅見直輝:今日はありがとうございました。