現役産婦人科医が「産後の生活不安」を解決するために起業した。子育て、育児、病児保育の現場の声を届けるこの対話、本シリーズの第3回対談。

話し手:園田正樹(そのだまさき)
現役産婦人科医

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

病児保育の実態

■安心して仕事に取り組めるための病児保育の充実を

浅見直輝:現場の声を届ける“ともすもと”。
今回の対談相手は、病児保育の課題に向き合う現役の産婦人科医兼起業家でもいらっしゃる園田正樹さんです。

園田正樹:よろしくお願いします。

浅見直輝:こちらにいらっしゃるのが、全国の色んな現場にある生きづらさをほおっておかない政治家、木村よしお先生です。

木村よしお:木村です。どうぞよろしくお願いします。

園田正樹:よろしくお願いします。

浅見直輝:ここまでのお2人の対談の中では、どうして園田さんが病児保育であったりとか、そこを医師としてだけじゃなく起業家として取り組む様になったのかって言う背景と、その上で特に病児保育って言う所をキーワードに、お母さん達の困り事と病院や保育施設ができる事をどう結びつけるか、って言うのを話してきました。

ここからは3つ目のトピックとして、看護休暇って言う所を話せればなと思います。
これは特に、園田さんが目指していらっしゃる未来の中でも、やっぱりお父さん、お母さん達が安心して、子育ても働く事もできる様にって意味では、やっぱり安心して預けていいとか、安心して子供の事見れていいんだよねって言う意識がたぶん必要だと思うので、その中でちょっと看護休暇って言うものの課題を、まずお話頂ければなと思います。

園田正樹:はい。まずですね、日本は看護休暇がまず世界と比較しても非常に少ないと、年間5日間であったりとか。海外はその10倍近く、何倍もあったりって言う所で、これは非常にネガティブな状況かなと思っていて。

浅見直輝:看護休暇は、お父さん、お母さんが子供の病状を看る為の休暇って事ですか?

園田正樹:そうですね。おっしゃる通りです。
子供病気になったよ。じゃぁ、看護必要だよねって言う事で、その為に休める日にちとして設定されていると。その時に、僕はそれが広がった方がいいなとは思っているんですが。それは何でかって言うと、やっぱり病児保育も、僕は病児保育施設が絶対いいから、みんな仕事をちゃんと続けて、預けた方がいいよって言いたいわけでは無くて。あくまでその選択肢の1つとして、看護休暇として自分が休んで、しっかりケアをする、おうちでケアをする。あるいは、病児保育の医療のプロがいて、安心して保育が提供される施設にお願いして、自分は仕事に行く。どちらもちゃんと尊重されるべき選択だなと思っていて。
ただ、看護休暇が非常に少ないとその選択自体は取れなくなって、結局有休を使ったり、先ほども前回お話した、結局職場を休むとですね、同僚に非常に申し訳ないって思ったり、場合によっては企業の方も、毎週毎週休むと、どうしてもその方に大事なミッション、仕事をお願いできなくなるって言う、これ現実的な課題も確かにあるので。結局その現場の理想と現実みたいな所で、結局うまく行かなくて、お母さんが仕事を辞めたりとかって言う現状があって。子供が風邪引いて、お父さん、お母さんが仕事を辞めるって、それはちょっと僕の中ではどうしても解決したいって思いなので、今やっている所です。はい。

浅見直輝:安心して育児も働く事も、やっぱりできる仕組が必要だと。

園田正樹:そうですね。

木村よしお:やっぱり、おっしゃる通りの状況で。
日数とか何とかって言うよりも、、どうしても今やってる仕事を続けたいとか、今やってる仕事でどうしてもアポイントとかあって日程ずらせないとか、相手に迷惑掛かるとか仕事現場の他の人に迷惑掛かるとか。そう言う意識があって。しかし、一方で面倒見てくれるとこがあるかって言うと、すぐ保育園か何かが、「もうお子さんを引き取りに来て下さい。」と。こう言って電話掛かって来るとか催促掛かってきたら、もうお母さんやお父さんとしては、パニックになっちゃうわけでありまして。そう言う意味では、しっかりと、ちゃんと預かって、お子さんの健康状態とかなんかも真剣に看てくれる、専門家が看てくれると。これは有り難いので。
ここを充実して行く事が、私は1番まず先決だなと。その上で選択と言う事が出て来るんでね。
どちらかちゃんと選べるにしても、それぞれが整ってなきゃいけないわけでありますので。そう言う意味で、いい問題提供して頂いて、いい取り組みをして頂いてるんで、是非これをちゃんとした制度となる様に、進めていけば、より一層、それこそ働きにくさ、そう言うのが解決して行けるんだなと。
子育ての中で、もうとにかく保育園さえ作ればいいと言う今の中で、実はそこだけじゃ無いんだと。こう言う大事な部分が、1番肝心な部分が今まで抜けてたなと。これをしっかり取り組んでくれてるんで、良かったなと思っています。

園田正樹:ありがとうございます。

木村よしお:是非、大いに頑張って頂きたいなと。

園田正樹:ありがとうございます。

木村よしお:それで、恐らくこのシステムがちゃんと出来上がると、今度は逆に利用者が非常に爆発的に増えてきて、数字で表れている様に爆発的に増えたきたら、今度は施設が足りないとか、人員が足りないとかって、もう普通の当たり前の問題になってきますからね。この辺もちゃんと手当てができる様に、システムとしてね。何と言っても、保育料がタダになればいいって言うわけじゃなくて、必要なとこにはやっぱりお金を投入して、こう言うシステム作りをちゃんとバランスのいい、使いやすい、そして皆さんが喜んでもらえる様な仕組作りをして行く必要ありますね。

園田正樹:そうですね。

木村よしお:いい問題提供と解決策を与えて頂いて良かったなと思うんで。

■テクノロジーが安心を増やす

園田正樹:ありがとうございます。
今、まさに仕事と育児、安心して仕事もできる。例えば、子供が病気の時に病児保育室にお願いして、お母さんとしたら、「今うちの子大丈夫かな?」って心配だと思うんですよね。なので、いつもより生産性がどうしても下がってしまってもおかしくないと思うんですが。今、非常にテクノロジーが進んでいるので、例えば、保育記録、病児保育室の保育記録とお母さんのスマートフォンがリンクすれば、「あ、今、熱ちょっと下がってきたよ。」であったり。

浅見直輝:リアルタイムにわかる。

園田正樹:そうですね。「ご飯、どれぐらい食べれたよ。今、寝たよ。」みたいな事も、お母さんわかると。どうしてもその電話を掛けて、「今、うちの子どうですか?」って、さすがにそれは申し訳なくて、皆さんしないんですが。それをスマートフォンを活用して、そう言った事で、「あ、安心して今仕事じゃぁ頑張ろうと。夕方まで頑張ろう。」って思える様な、そう言うアプローチもあるかなと思っていて。はい。是非、そう言う社会にしたいと思っています。

木村よしお:今はだって、スマートフォンだったら、そのお子さんの今の姿が写せるから。

園田正樹:いや、ほんとそうなんですよ。

木村よしお:それ見たら安心しますよ。「あぁ、元気だなぁ。ニコニコしてるなぁ。」って。

園田正樹:ほんとですね。

木村よしお:わかるじゃないですか。だから、すごいそう言う意味ではスマートフォンなんか活用できますよね。
単なる健康データじゃなくて、実像、今の現状を写せるから。ね?

浅見直輝:とにかく、お母さん、お父さんの安心を生む為の手段ですよね。

木村よしお:そうですよね。

浅見直輝:そう言う意味では、その子育てとか病児保育の中で、お母さん方、お父さん方の孤独って言うのは、やっぱり大きいんですか?

園田正樹:そうですね。実際、病児保育施設が素晴らしいなと思っているもう1個が、育児支援って言う機能があって。例えば、僕の今お世話になっている施設は、育児不安のあるお母さんは必ず預かろうと。
その時に、「今、ご家庭でどう言う事困ってますか?」って言う事をちゃんと相談の乗ったりですね。
そう言う事をちゃんと、繋がる事が僕はすごく大事だなぁと思っていて。実は、その孤独って言うのは、本当に1つのキーワードで、子育ての“子”を孤独の“孤”と書いて“孤育て”って言ったり、僕らもするんですが。
1番不安なのは、やっぱり家の中から1歩も出れなくて、ずっともう育児、子供と2人の時間を過ごして、
ご主人は夜遅くに帰って来て、家事だけじゃなくて育児もほとんど介入が無くてって言う場合に、もうお母さんって本当に真っ暗の中をただ歩いてて、出口がどこかも全然わからなくてって言う。
幸い、今はスマートフォンで割りと外と繋がれる機会もあるので、そこを僕は病児保育って言う切り口だけしかまだできないんですが、外と繋がれるといいんじゃないかなと思っている所ですね。

木村よしお:この面白い数字がありまして。全世界の中で、色んな国を見て、子育てが楽しいかと。それから、子育てやっぱり非常に苦痛を感じるかと、言う様な数字が出てまして。
国によっては、もう子育て楽しくて、もう赤ちゃん抱いてたり、子供と一緒にいるのが楽しくてしょうがないって言う所が、だいたい6~70%はそう言う様な意識を持ってる国があるんですよ。
ところが、2~3割なのが、日本と韓国なんですよね。

園田正樹:なるほど。

木村よしお:日本と韓国は、子育てに対して非常に重荷を感じてて。

園田正樹:なるほど。

木村よしお:そう言う、日本と韓国の独特の・・・何て言うんですか。特殊性があるのかなと。

園田正樹:なるほど。

浅見直輝:そうなんですね。

木村よしお:日本の子供を抱えた親御さんは、わりあい、非常に苦痛にって言うか、重荷に感じてるって言うか、真剣に考え過ぎてる。真剣に考え過ぎてるんでしょうね。

園田正樹:なるほど。

木村よしお:だから、考え過ぎちゃってる所があるんじゃないかな。

浅見直輝:仕事に対しても真剣に考えちゃうから。

木村よしお:ところが他の国では、もう子供と一緒にいると生き生きと目がランランと輝いてて、こんなに幸せな事は無いと思ってる国が。有名な女流の作家の方々も、世界回ってみたら、もう子供を抱いてるお母さんの目見たらわかると。ほんっとに幸せなお顔してると。なんか日本は、こう大変だと言う・・・。

園田正樹:おっしゃる通りですね。

木村よしお:そのギャップが、結構あるんじゃないかって言うんで。こう言うちゃんと病後児保育とか病児保育とか、こう言うのがドンドンドンドンしっかりとシステムとして、ちゃんと整って来たら。皆さん、子育てに関して、やっぱり1番大変なのは、病気の子供さんを抱えると、こう言う所が1番心配しますって。それを解消してあげたら、そう言う様な、今言った、子育てに対して非常に辛さを感じる人達がドンドンドンドン無くなって来る事は、素晴らしい事ですよ。
だから、みんな、子育て素晴らしいなってなったら、出生率も相当改善して来るんじゃないかと。

園田正樹:そうだと思います。

木村よしお:ただ、出生率が上がるなんて言うのは、ちょっとなかなかね。

浅見直輝:安心を求めてるんですよね、お母さんは。

木村よしお:そう。やっぱり安心ね。子育てに対する安心感。まだまだ日本の今のシステムは、ちょっと追い付いてない所があるのかもしれませんね。

園田正樹・浅見直輝:う~~~ん。

木村よしお:海外の人達は、そんなのあまり気にしない。

園田正樹:そうですね。実際、真面目な方の方が、結構僕のイメージだと、やっぱりちょっとドンドン孤独に向かって行って、鬱になりやすいと言うか。割と楽観的に何でも人に相談したりとかって言う人の方が、やっぱり僕らも安心できて。真面目な方って、やっぱり自分の中でドンドン「こうじゃなきゃいけない。」って言うのを。
それ自体が悪い事ではないんですが、残念ながら今、核家族化しているので、おじいちゃん、おばあちゃんがいて、サポートが常に近くにあるわけじゃないので。

浅見直輝:そうですね。

園田正樹:ドンドン自分の中に閉じ篭ってしまうと、どうしてもそうなってしまうので。そこをどうしたらいいかなぁと思っています。

木村よしお:だから、子供だけじゃなくて問題点まで一緒に抱え込んじゃって、悩んじゃって。それで、かえって閉じ篭っちゃうんでしょうね。だから、そこを解決策は、やっぱり気楽に相談できる様にして行くとか、気楽にそう言う意味で預かってくれる。要は、病児、病後児を気楽に預かってくれる施設が出てきたら、相当そう言う悩みから解消されますよ。