現役産婦人科医が「産後の生活不安」を解決するために起業した。子育て、育児、病児保育の現場の声を届けるこの対話、本シリーズの第1回対談。

話し手:園田正樹(そのだまさき)
現役産婦人科医

話し手:木村よしお(参議院議員)
参議院議員。元厚生労働副大臣。年金、医療など社会保障のエキスパートとして、よりよく暮らせる社会のために活動を続けている。参議院厚生労働委員会委員、参議院行政監視委員会理事、参議院政府開発援助等に関する(ODA)特別委員会理事。

ナビゲーター・コーディネーター:浅見 直輝(最前線で活動し社会を変えていく青年)

病児保育の実態

■出産時の問題よりも、産後の問題の方が大きい

浅見直輝:それでは、現場の声を届ける“ともすもと”。
今回の対談相手は、こちら病児保育の課題に向き合う、現役の産婦人科医兼起業家の園田正樹さんです。
こちらいらっしゃるのが、生きづらさをほおっておかない政治家木村よしお先生です。

全員:どうぞよろしくお願いします。

浅見直輝:今回は、テーマとしては、病児保育の課題と未来と言う所で、現在起業家としても活動されている園田正樹さんの今のビジネスだったりとか、後は、そこに至る過去の原体験であったりとか。
そしてその後、政治家の木村先生とどう言った未来を作って行く事ができるかって言う所を話していければと思います。
では、早速なんですけれども、園田さんの原体験と言うか、なぜこの病児保育であったり、後、産婦人科医であったりとか。そう言う所にどうして興味を持たれたのか、覚悟を決めたのかを、ちょっとお話頂ければと思います。

園田正樹:ありがとうございます。
まず、僕は子供が非常に好きで、なので医師になった後、何科に行くかって言うのは、あまり迷わず産婦人科か小児科どちらかになろうと思っていました。で、実習をしている中で、自分は産婦人科、特にお産ですね。
やっぱり分娩が・・赤ちゃんが泣き声上げたら、みんなで「わぁ~、おめでとう。」って言うあの瞬間がすごく、今でも喜びが大きくて。
かと思えばですね、やっぱり分娩って、みんなが安心・安全にお産が終わると思っている所が、突然のお母さんの大出血であったり、生まれる直前に赤ちゃんが「すごい苦しいよ。」って言うサインが出て、それがうまく行かないと脳性マヒって言う、非常に悲しい顛末をたどりうるっていうのが、非常に産婦人科のポジティブな部分と非常にネガティブなこの振れ幅が非常に大きくてですね。
そこにいる医師もはじめ助産師、スタッフみんなが、それをどちらの方向にチームとして持って行けるのかって言う所に大きなやりがいを感じて、是非産婦人科をやりたいと決めました。はい。

木村よしお:今ですね、産婦人科や小児科になりたいと思う医者は、非常に数限られてるんですよ。もう貴重な存在で。特に、産婦人科医で男の医師の方は、非常に産婦人科の所では求めていますからね。

浅見直輝:比率も、かなり違うんですか?男女の。

園田正樹:そうですね。やっぱり、産婦人科はお産があるし、患者さんが全員女性と言う事もあって、僕の同期はだいたい6割~7割は女性医師が産婦人科を。はい。産婦人科の中の6割~7割が女性医師ですね。

木村よしお:特に病児、病後児保育って、本当に必要なんだけど。今まではある意味で、ちょっとね、あんまり注目されて無くって。本当に必要なんですよね。それを、とにかく今までは、私も保育園と幼稚園が一緒になった認定こども園の・・。自民党の議連の会長してるんですよ、議員連盟の。会長を私やっておりまして。
保育なんか随分長い事取り組んで来てますけど。いかに病気になったお子さんをどうやったら取り扱って行くかって、本当にみなさん苦労して。

園田正樹:はい。

木村よしお:また逆に、父兄の方に、お父さん、お母さん大変な重荷を背負わせたり、園としても苦労があったりして。そこを、ここがしっかりシステムとして完成されて行けば。どうしたって、どんな子供だって病気しない子供いませんから。そう言う意味では、お父さん、お母さん、すごい安心して。
また、それが仕事の方にもすぐ取り組めるし。それをすぐ「今からちょっと調子が悪いからって、もう是非ね、連れて帰って下さい。」って、電話掛かってくると。仕事の関係とそこの関係で、お父さん、お母さん非常に悩んでますから。

園田正樹:おっしゃる通りで。まさに、ただ、ほんと言うと、2年前まで僕、実は病児保育って言うものをあまり知っていなくって。じゃぁ、なんでそもそも取り組もうとしたかと言うと・・・。

浅見直輝:気になります。

■病児保育問題の解決を、産婦人科医の立場から

園田正樹:はい。やっぱり、僕はその子供がすごい好きで、日本で子供って、イコールHAPPYでいいって思うんですが、子育てがイコールネガティブ(になりがち)。残念ながら、キャリアの阻害であったり、プライベートな時間が減って旅行も行けない、お金的にも好きな物を買うって言うのをちょっと我慢しなきゃいけないって言う、子育て自体が非常にネガティブな存在に日本はあるんじゃないかなと思っていて。
そこで、僕の産婦人科医の立場から、それがどう言う風に、悪く行ってしまうとどうなるかって言うと、やっぱり、お母さん達1人で子育てをして、誰にも頼れなくなって、家の中で1人で頑張って産後鬱になったり、
場合によっては一部の方が虐待って言う方向に行ってしまうと。それを、じゃぁ何とかしたいって思った時に産婦人科医である僕ができる事って、実はあまり無くてですね。
助産師さんに繋いで、地域に繋いで、みんなでご主人をちゃんと「育児のサポーターじゃなくて、あなたは主体者ですよね。」っていう事で、しっかりと教育をしたりとか。
後は、お子さんが上にいらっしゃれば、短時間保育にどうしても産休、育休明けてなってしまって、復職してない時はですね。そうなると、お母さん2人のお子さんでもう手いっぱいになったり。
それを「じゃぁ、保育園上の子長時間で見ますよ。」と。それが、素晴らしいなと思ってると同時に、じゃぁ僕が何ができるんだろうって考えた時に。やっぱ医者ができる事、実は少ないなと。
病院だけじゃなくて、もっと上流にある生活をどうやって変えられるかなと思った時に、じゃぁ僕ができるのって何だろって。ずっと考えた時に、病児保育って言うものに出会いまして。
今、お母さん達、お父さんが1番困るのって、仕事しながら育児をして、両立やってる時に子供の急な病気の時の仕事の調整なんですね。まさに、おっしゃられた通りなんですが。
それって実は、10年間ずっと1位で。アンケートを取りますと。

浅見直輝:何の1位なんですか?困り事としての・・・。

園田正樹:おっしゃる通りですね。子育てしながら仕事をする上で、困った事って言う質問に対して、いくつか回答があるんですが。その1位が「急な病気の時の仕事の調整。」って言う事で。あ、じゃぁ10年間これ変わってないんだなと。現状変わってなくて、解決策が出てないんだなと思った時に、じゃぁ何があるだろうって言う時に、病児保育があるじゃないかと。じゃぁ、病児保育あれば、みんなその部分かなり解決するのかなと思ったら、そのアンケート通り解決してないと。じゃぁ、病児保育をまず見に行こうと思って、現場を見に行った次第なんですね。
で、見に行くと、めちゃくちゃ本当に明るくて。病児保育って行く前は、ちょっとネガティブなイメージもあったんですが。やっぱり病気のお子さんがいらっしゃるので、少し暗いのかなと思ったんですが、全然そんな事なくて。
まっ確かに、熱はちょっとあったり、マスクして「コホコホ。」はしてるんですけど、めちゃくちゃみんな元気に遊んでるんですね。

浅見直輝:そこにいるのは、病気になってるお子さんと、それをサポートする専門的なスタッフさん達。

園田正樹:おっしゃる通りですね。
トレーニングをされた保育士さんと看護師さん。で、バックヤードに医療機関であれば医師が待機していると言うか、いつでも対応できるって言うのが、病児保育室ですね。
イメージして頂くと、クリニック、病院や保育園に併設した保健室みたいなものが3部屋、4部屋あるって言う様なイメージですかね。1階が小児科のクリニックで、2階がそう言った保育を行う部屋が3部屋、4部屋ある、そう言ったイメージですね。

■夜間や緊急時のこどもたちの病気への対応

木村よしお:いや、私も同じ問題意識持ってましてね。

園田正樹:はい。

木村よしお:実は、私は、夜間の病気の場合に、皆さんすごい困っておられたんです。
私、15年ぐらい前に厚生労働副大臣している時に。この問題、夜、子供さんが体調崩した場合に、もうお父さん、お母さん達右往左往して。もう、すぐ救急車呼んだり、病院に駆けつけたりして、色々と、もう苦労されてる。
「なんかいい方法ない?」って言ったら、もっと簡単に、何て言うんですか、アプローチできる様な、アクセスできる様な方法ないかって言う風に考えて、“#8000”って言う電話を作ったんですよ。それ、全国どこでも“#8000”さえ掛ければ、相手側に看護婦さんやお医者さんが常駐してて、特に夜、深夜まで。
それで、病状聞いて、「あ~あなたのお子さんだったら、これはただちに救急車呼んで、病院行かした方がいい。」とか、「いや、それはね、まぁ翌朝心配だったら、お医者さん行って下さい。」とか、「まぁ寝かせとけば大丈夫だよ。」そう言う様な的確な電話診断、電話診断ができる様な仕組を“#8000”で。
“#8000”番で、“#”押して“8000”番掛けたら、その仕組作って。今、ようやく全国で普及してるんです。話聞いたら、スタート全く同じで、これは夜間の方からスタートしたんですが、あなたは、昼間のそう言う所からスタートしてる。ある意味、すごいよね。

園田正樹:共通してますね。

木村よしお:本丸の方に、取り組んで頂いて誠にありがとうございます。

浅見直輝:すごいですね。立場は違えど、でも解決しようとしてる問題は・・・

木村よしお:全く、同じで。

園田正樹:そうですね。

木村よしお:ほんとにね、お子さんが急になった時に、ほんと皆さん苦労しておられますからね。そこでどうやって解決して行くかって言うのでね。いやぁ、いよいよ本丸で、しっかりもう・・・現職の産婦人科の先生が、取り組んでくれるって言うのは、それはもう期待してますから。

園田正樹:ありがとうございます。
そうですね。まっ、本当に現場は素晴らしい場所だなって、僕は幸い知る事ができたんですが。
もう1点ですね、今度はお母さんにヒアリングをしたんですが。そうすると、皆さん病児保育知ってるんですね。「使った事ありますか?」って言うと、実はほとんどの方が使っていなくて。「何で、使われないんですか?」って聞いた所、もう使えないものだって言う風に諦めてしまっていると。

■病児保育には非効率が存在する

浅見直輝:それは、なぜ使えないと思ってるんですか?

園田正樹:いつも、まず満室でいっぱいなんでしょ?って言うイメージと。後、実際トライした方は、やっぱり朝、7時半から8時から予約がスタートした時に、もう電話が全然繋がらないんですね。
それも、そこの時間でみんなが集中して。はい。なので、30分繋がらなくて、やっと繋がったと思ったら、今日は満室で、「ごめんなさい。」って断られてしまうと。もうこれ3回ぐらい断られると、もうお母さん「使えないものだな。」と思って、諦めてしまっている様で。
じゃぁ、毎日100%の利用率かって言うと、実は35%しか使われていないので、定員6人であれば2人使って、4人分空いてるって言うのが現状なんですね。

浅見直輝:余ってる方が多い。

園田正樹:おっしゃる通りなんです。

木村よしお:やっぱり病気って、突発して起きますからね。予約して起こるもんじゃないので。
それはもうどうしても、インフルエンザが流行った時に集中するとか、やっぱり様々な問題点。
天候が変われば、皆さん体調悪くなったりとか。やっぱりこう非常に波がありますから。それをうまく調節する方法、じゃぁ考えて。すごいですよね。

園田正樹:でも、おっしゃる通りで。
施設にアンケート取ると1番困るのは、日々の変動なんですね。なので、今日は満室、明日は0、明後日は満室みたいな、こう言うバラつきに結構困っていて。そうなんですよね。利用率が35%なので、じゃぁニーズがそもそもどれぐらいあるか。今って病児保育、年間延べ64万人の方が、平成28年度時点で使われてたんですが。僕が試算すると、だいたい700万人ぐらいは使うかなと。
別の組織は2,000万人ぐらい、つまり今の10倍以上ニーズはあるんじゃないかなと今考えていて。
にも関わらず、使われてないと。それは先ほどの、電話予約に代表される使いづらさと、どうせ使えないんでしょって諦めてしまって、ニーズが潜在化してしまってるってとこを、何とか解決したいなと思って。

浅見直輝:なるほどです。病院側は病院側として、せっかく施設もあって、専門的なスタッフも揃ってるのに、日々の利用率が違って、しかも平均的に35%の利用率だから、もっと使って欲しいって言う課題と、現場のお母さん達としては、使いたいのに使えないって言うここが合ってないと。

園田正樹:そうですね。

浅見直輝:そこを結びつける所で、今、園田さんが医師としてだけじゃなくて、起業家として“あずかるこちゃん”って言うサービスを作ってるんですが。
これはちょっと2つ目のトピックとして、話して行ければと思うので。
一旦過去の原体験、思いって言う所で、ここで一旦締めさせて頂ければなと思います。

なぜ現役産婦人科医が病児保育に取り組もうかと思ったのかについて語って頂きました。
次回は、病児保育の実態についてさらに深掘りして語って頂きます。